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十一歳の夏。自分の骨の音を聞いた。

周りよりも早めにきた成長期のせいで、毎晩眠れないほど苦しんだ。

長く長く続いた成長痛は、まるで誰かの痛みまで引き受けているような気分だった。


白を基調としてる一軒家はまだ新築の匂いがする。高い天井に、シミひとつない壁。必要最低限の物しか置いていない自分の部屋は殺風景すぎて、広さと釣り合っていない。

俺は起きた格好のまま外に出て、郵便受けの扉を開けた。

支払い関係のハガキの中に紛れるように入っていた一枚の手紙。シンプルな真っ白い封筒には、宛先だけが書かれていて送り主の名前はない。

……ガチャンッ。

勢いよく郵便受けの扉を閉めたあと、俺はいつものように手紙だけをポケットの中に突っ込んだ。


「晃、なんかお手紙届いてた?」

生け花の匂いがする廊下。その突き当たりにあるリビングから出てきたのは、エプロン姿の母さんだった。

「ん」

俺はハガキをすべて渡す。母さんが目を通している間に、足は階段の一段目を上がろうとしていた。


「ちょっと! 顔洗って早くご飯食べなさいよ」  

「スマホ取りにいくだけだよ」

「そんなこと言って、何回も二度寝してるじゃないの」

母さんの小言が長くならないように、俺はそそくさと二階に向かう。