ホームルームを経て、体育館に移動すると終業式がはじまった。

全校生徒が集められている空間で、私は三組の列に目を向ける。

……やっぱり、来てない。

澤村先生に聞いてみようかと考えたけれど、同時にどこまでも他力本願な自分に呆れた。

……私の弱虫。臆病者。

今日は終業式だけなので、学校は昼前に終わった。

たった二週間程度の冬休みでは名残惜しさもないようで、荷物を持ったクラスメイトたちは颯爽と帰宅していた。


「ねえ、今井さん。今日、午後からバイトなんだけど、よかったらお茶でもしに来る? 店長いないからいっぱいサービスできるよ!」

カバンを肩にかけている冨山さんも帰ろうとしていた。

「ごめん。冬休みにお母さんと旅行に行くから、ちょっと今、節約してるんだ」

「えー旅行? いいね! 楽しんでおいでよ」

「ありがとう。休みの間も連絡するね」

「うん。私もする!」

笑顔で冨山さんと別れると、私は意味もなく自分の席についた。

もうみんな帰っていったっていうのに、私は教室に止まり続けている。

少ないけど課題もあるし、もしかしたら晃が取りに来るんじゃないかって。

それで、ここで待っていれば廊下を通るんじゃないかという、小さな希望が足を引き止めていた。

……思えば、最初に声をかけられたのも、この教室だったな。

誰もいない静かな空間で、机の中にある教科書を手に取ろうとした時に……。

――ガラッ。

勢いよく開いたドアに、私は胸を弾ませた。