「そのストラップ、すごく綺麗ね」
そう言って洗濯物と交換するように、私にそれをを渡してくれた。
――『汐里までいなくなるのなら、私は生きてる意味はないわ』
あの騒ぎが嘘だったかのように、今は優しいお母さんに戻っている。
あれ以来、もちろん私は晃の話をしてないし、お母さんからも聞かれない。
話し合わなくちゃと思っていても、またお母さんの心をひどく乱してしまいそうで先伸ばしにしている。
「今日の晩ごはんはうどんを茹でようと思ってるんだけど、汐里はにゅうめんのほうがいい?」
「お母さんの好きなほうでいいよ」
「じゃあ、にゅうめんにしようか。この前、安売りしててたくさん買ってきたから」
お母さんは私と温泉に行くことを楽しみにしていて、そのための節約もきっちりとしてくれている。
行き先は露天風呂から星が見えるという、老舗旅館を候補にしてる。まだ予約はしていないけれど、冬休み中には行く予定だ。