入院生活は思ったとおり暇だった。当初一週間だった入院は予後不良のために、二週間に伸びてしまった。

同じ病室の患者が検査などで出ていくと、部屋はとても静かだった。

俺のベッドは窓際にあるので、カエデの木が寒そうに空っ風で揺れている様子もよく見える。

……汐里は、また無理をしてないだろうか。

彼女とは河川敷以来、連絡をとっていない。

スマホを見つめては汐里と繋がっている番号を眺めるけれど、電話をしたらまた彼女のことを苦しめてしまう気がしてかけられない。

あの夜、汐里は泣いていた。

泣くことに関して一番あらがっていたであろう彼女が声をあげて。

――『初めまして。蓮見晃です』

あの時、俺も初めて〝蓮見〟を名乗った。

抵抗はあったし、怖さもあった。

でも、誤魔化しても遠回りをしても、結局俺は汐里への想いの深さに気づくだけで、彼女のことを諦められないという答えに行き着く。

だったら、どんなに悩んでも同じなのだから、逃げたくないと。

できるなら、俺と汐里が一緒にいることを許してもらえるように、努力しようと思った。

これからだった。

これから頑張ろうと思っていたのに、俺は今日もベッドの上で空を見てる。