天井の蛍光灯が反射してるぐらい綺麗な廊下を移動していると、車いすはある場所で止まった。
それはリハビリテーションの前だった。
「晃くんが来る時はいつも開いてることが多いかもしれないけど、基本的にリハビリは月水金の週三日しか行ってないんだ。うちに専門のスタッフが少なくてね」
たしかに今日のリハビリテーションは休みだった。通るたびに中の様子が見えるガラス窓にも白いカーテンがかけられている。
どうやらリハビリを補助するためには理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった医療系国家資格が必要なことも同時に教えてくれた。
「リハビリは身体の機能訓練だけじゃなくて心の回復にも必要なことだけど、この病院では手助けすることに関して少し足りない部分がある現状なんだよ」
「……そんなこと俺に話していいんですか?」
「きっと医者としてはダメだろうね」
どうして俺に聞かせたのかはわからないけれど、少なからずなんとかしてあげたいと思う患者の中に俺がいるということだけはわかった。
「晃くん、ひばり市って知ってる?」
「聞いたことはあります」
「そこにね、国立病院難病医療センターがあるんだ」
……難病医療。
「医学会が推奨してるリハビリテーションだけじゃなくて、デイケアセンターや療育施設も整っている。なにより晃の病気に有効な血液浄化療法というものを行うことができるんだ。今までの治療より身体に負担はかかるけど、もしかしたらそれが晃くんにとって効果的に働くかもしれない」
「………」
「これは晃くんの未来のための話だよ」
先生も主治医として、俺の病気と真剣に向き合ってくれている。
自分の未来はそう遠くない。
この瞬間にも進行していく症状を止めることができないのなら、せめて症状が出てもいいように俺は準備していかないといけないのかもしれない。
「もう一度、病院の名前聞いていいですか?」
「ひばり市の国立病院難病医療センターだよ。案内のパンフレットがある。あとで病室に届けにいくよ」
気づくと俺は自然と「よろしくお願いします」と伝えていた。



