16歳、きみと一生に一度の恋をする。



「……私がもっと早くに気づいて適切な治療をしていれば……」

母さんは俺の病気が自分のせいだと思っている。その負い目から早く生活を豊かにして、俺に最善の治療をさせてあげたいと願っていたことは知っていた。

「べつに母さんをせいじゃない」

誰かのせいとは思いたくない。

どんな選択をしてもいずれこうなる運命だったと受け入れるほうが俺には合っている。

「学校になんて説明したの?」

「ありのまま検査入院することになったと伝えたわ。でも今までどおりクラスメイトには秘密してほしいと言っておいたから」

「そっか」

今までさんざん生意気だと喧嘩を売られて、隙を見せないように虚勢を張り続けてきた俺が、効果的な治療薬がほとんどない難しい病気に侵されているなんて、誰も想像すらしないだろう。

病気で軟弱だと思われたくない。

探られるのも気を遣われるのも面倒だからと、今まで病気のことはひた隠しにしてきた。

もちろん汐里にも悟られたくないと思う一方で、誤魔化していたくないと考えている自分もいる。

いつか誰かにありのままの自分を見せる日がきたとしたら……それは汐里がいい。