16歳、きみと一生に一度の恋をする。



「なあ、お前は想像したことある?」

晃が遠い目をしながら問いかけてきた。

「母さんが再婚したいと連れてきたのはお前の父親で。お前の家族をめちゃくちゃにした末に家族になって。これでもかってくらいお前のこと不幸にしかしないっていうのに、俺たちが笑って隣にいる未来を想像したこと、ある?」

「………」

「俺は何度もあるよ。こうなれたらいい、こうだったらいいって思うこと。でも、無理だよな。……許されないんだよな」

彼の震えた声が、夜空に溶けていく。

私だってあるよ。

なにもかもなかったことにして、きみと一緒にいる未来を。

でもそのたびに、想像はすぐに消える。

それは儚くて、すごく遠いことだから。

「晃、私……」

きみのことなんて、好きになるわけがないと思っていた。

でも好きじゃないと否定した瞬間に、心が痛かった。

その痛みが、否定した気持ちは嘘だと教えてくれた。 

「今はなにも言わなくていい」

「……っ」

晃に抱きしめられた途端に、私は子供みたいに大泣きした。