「なあ、お前は想像したことある?」
晃が遠い目をしながら問いかけてきた。
「母さんが再婚したいと連れてきたのはお前の父親で。お前の家族をめちゃくちゃにした末に家族になって。これでもかってくらいお前のこと不幸にしかしないっていうのに、俺たちが笑って隣にいる未来を想像したこと、ある?」
「………」
「俺は何度もあるよ。こうなれたらいい、こうだったらいいって思うこと。でも、無理だよな。……許されないんだよな」
彼の震えた声が、夜空に溶けていく。
私だってあるよ。
なにもかもなかったことにして、きみと一緒にいる未来を。
でもそのたびに、想像はすぐに消える。
それは儚くて、すごく遠いことだから。
「晃、私……」
きみのことなんて、好きになるわけがないと思っていた。
でも好きじゃないと否定した瞬間に、心が痛かった。
その痛みが、否定した気持ちは嘘だと教えてくれた。
「今はなにも言わなくていい」
「……っ」
晃に抱きしめられた途端に、私は子供みたいに大泣きした。



