16歳、きみと一生に一度の恋をする。


「じゃあ、汐里も私のことを裏切るの?」

「え……?」

お母さんの言葉に、目の前が真っ暗になった。

「あの子と仲良くなって、あの人の元に行くつもりなんでしょ?」

「ち、違うよ。そんなこと考えたこともないよ!」

「私の知らない間にあの人とも会っていたんじゃないの? それで汐里も私のことを捨てるつもりなんでしょう」

お母さんは完全に我を忘れていた。きっと晃と会ったことで、風船のように溜め込んでいたことが、爆発してしまっている。 

「汐里までいなくなるのなら、私は生きてる意味はないわ」

脳裏によぎったのは、お母さんが救急車で運ばれた日のことだ。

あの時、私は本当にお母さんが死んでしまうと思った。

怖かった。膝から崩れ落ちるくらいに。


「お、落ち着いて。私はいなくならないから」

もう繰り返したくない。

お母さんのことを失いたくない。

「……だって汐里はあの子のことが好きなんでしょ?」

それを聞いた私は全力で首を横に振った。

「……っ、好きじゃない。好きじゃないから、生きてる意味がないなんて、そんなこと言わないでよ」

そう言って私はお母さんのことを抱きしめた。