そのあと、早退はせずに午後の授業を受けた。放課後になり、すっかり体調は回復していたけれど……。
「本当に本当にもう平気なの?」
冨山さんはバイトで早く帰らなきゃいけないのに、どうやら私がまた倒れるんじゃないかと心配してくれていた。
私、みんなに心配されてる。
少し前なら申し訳ないって思っていただろうけど、今はその気持ちが嬉しい。
「今日はバイトも休みだし、早めに寝るよ」
「そうしてね! なにかあったらすぐ連絡して! バイト抜け出して会いにいくから」
「はは、ありがとう」
そして校舎を出て、帰り道。冨山さん同様に、ひとりにさせたくないと晃が家の近くまで送ってくれていた。
「冨山と仲良しじゃん」
「うん。仲良くしてくれてるよ」
「そっか。よかったな」
晃は私のことなのに嬉しそうにしていた。
「そういえばね、冨山さんから晃の中学の話をちょっとだけ聞いたよ」
「うえ、マジ? ろくな話がなかっただろ」
「そんなこともなかったけど、なんか噂で看護師の人と……」
と、その時。会話がふいに途切れる。話しているうちに視界にアパートが見えていて、ちょうどお母さんが錆び付いている階段を降りてきた。
……ドクンと、心臓が速くなる。
私は遊園地の帰りのことを思い出していた。



