「晃は授業に出なくていいの?」
「俺は目眩で仮病使ってるから、いいんだよ」
「……目眩って、嘘がバレバレじゃん。もっと他にあったでしょ?」
「とっさに思い付いたのが、それだったんだよ」
もう、と呆れながらも、自然と和む。いや、彼が和ませてくれているのかもしれない。
「なんか痩せた?」
晃は元からシュッとしてるけれど、なんとなく全体的なシルエットがほっそりとした気がする。
「その台詞はお前に返すよ」
「体重は変わってないよ」
「もう少し太らないとまたぶっ倒れるからな。いろいろ抱えるなって言っても無理だろうけど、あんまり自分のこと後回しにするなよ。心配だから」
晃の優しい言葉が、スッと身体に沁みた。
「大丈夫。ずっとここにいるから、もう少し眠れよ」
大きな手で頭を撫でられると、自然とまぶたが閉じていく。
〝大丈夫。ずっとここにいるから〟
それは私がお母さんに向けて言っていた言葉でもあった。
大丈夫だよって言うたびに、自分が大丈夫じゃなくなっていくような気がしていた。
本当は私も誰かに言ってほしかったんだ。



