16歳、きみと一生に一度の恋をする。



「晃は授業に出なくていいの?」

「俺は目眩で仮病使ってるから、いいんだよ」

「……目眩って、嘘がバレバレじゃん。もっと他にあったでしょ?」

「とっさに思い付いたのが、それだったんだよ」

もう、と呆れながらも、自然と和む。いや、彼が和ませてくれているのかもしれない。

「なんか痩せた?」

晃は元からシュッとしてるけれど、なんとなく全体的なシルエットがほっそりとした気がする。

「その台詞はお前に返すよ」

「体重は変わってないよ」

「もう少し太らないとまたぶっ倒れるからな。いろいろ抱えるなって言っても無理だろうけど、あんまり自分のこと後回しにするなよ。心配だから」

晃の優しい言葉が、スッと身体に沁みた。

「大丈夫。ずっとここにいるから、もう少し眠れよ」

大きな手で頭を撫でられると、自然とまぶたが閉じていく。

〝大丈夫。ずっとここにいるから〟

それは私がお母さんに向けて言っていた言葉でもあった。

大丈夫だよって言うたびに、自分が大丈夫じゃなくなっていくような気がしていた。

本当は私も誰かに言ってほしかったんだ。