それから数日が経ち、カレンダーが十一月になると肌寒いと感じることも増えていた。
「体育面倒くさいよね」
女子の更衣室になっている教室で、冨山さんと私はジャージに着替えていた。
お試し友達期間を経て、私たちはいつの間にか学校でもつねに一緒にいるようになっていた。
お互いにバイトが休みの日は遊んだり、今度映画に行く約束もしている。
着替えたあと体育館に向かうと、男子たちはすでにバスケットボールで遊んでいた。
準備運動をして、練習試合がはじまった。ただの授業なのに、クラスメイトたちは熱くなっている。
元から運動神経は良いほうではないので、私ら迷惑にならない程度でパスを回していた。
……ああ、なんか頭が痛いな。
今日の朝ごはんを抜いてきたのがまずかっただろうか。どんどん身体の力が入らなくなって、気づくと頭が真っ白になっていた。
『汐里』
遠くで晃の声がする。
どうして思い出すのは、いつだってきみのことなのかな。
もっと端っこにいたはずなのに、いつの間に私の心の真ん中にいるようになったの?
「――大丈夫か?」
優しい声がして目を開けると、晃が私のことを覗き込んでいた。
まだ頭がぼんやりとしてるけれど、鼻を突く消毒液の匂いでここが保健室だとわかった。
「……なんで晃が?」
彼は私のベッドの横にある丸椅子に腰かけていた。
「遅刻して登校したら、たまたまお前が保健室に運ばれていくのを見たんだよ」
……そっか。私、倒れたんだ。
少しバイトを詰めてやりすぎたかな。それとも昨日あんな写真を見つけてしまったから?
「……保健の先生は?」
「今、ちょっと職員室に行ってる。二時間は休めってよ。それでもダメなら無理しないで早退したほうがいいって」
「平気だよ」
「いいから、少し休め」
ベッドから起き上がろうとした身体は、再び晃の手によって戻されてしまった。



