16歳、きみと一生に一度の恋をする。



「ありがとう。美味しそうね。でも汐里はレバニラ苦手じゃなかった?」

貧血に効く食べ物をスマホで調べたら鉄分がいいと書いてあったので、私はレバニラ炒めとひじきご飯を作った。

「でも苦手な人でも食べられるレバニラっていうレシピを見て作ったから大丈夫だよ」

自分のことよりも、お母さんのことが心配でたまらない。

台所の床で意識を失っていたお母さんの姿が今も強く頭に焼きついている。


そこまでお母さんを追い込んだ原因は、父にある。

私たちは五年前まで普通の一軒家に暮らして、どこにでもある幸せな家族だった。


『他に好きな人ができたから離婚してほしい』

父の裏切りを知るまでは。


それからは思い出したくもないほど、家の中は冷えきっていた。

離婚が成立して、たくさんの幸せが詰まっていた家は売りに出した。

父はもう新しい人と住む場所を決めているようだったし、私とお母さんもこの家に住み続けたいとは思ってなかったから。


父の身勝手な行動によって、私たちの生活は変わった。

そこに大きな謝罪もなく、父はその後、あっさりと不倫相手の人と再婚してしまった。


お母さんが睡眠薬を大量に摂取したのはその頃だ。

私たちがどんな思いでいるかも知らないで、父は幸せに暮らしている。風の噂で子供もいると聞いた。

許せないというよりは、許したくない。

裏切り者と書いた手紙を父に送っていることで、なにかが満たされているかと聞かれたら、それもない。

父も新しい家族も、みんな不幸になればいい。

そう願えば願うほど、自分の心が消えていく感覚がした。