コンラッドとクロエの婚約話を、ザックは面会にやって来たナサニエルから聞かされた。
警備兵は、相手が国王ということもあり、今日は入口付近に控えている。大声を出さなければ、内容をしっかり聞き取られることはなさそうだった。

「なんですって? 解放?」

「ああ。その代わり、お前は王位継承権を放棄することになる」

ザックはナサニエルの話が信じられず、その口もとを何度も見つめた。
彼が取り戻しかけていた父親への信頼は、今まさに粉々に打ち砕かれた。

ザックはその歯がゆさを正直に父親にぶつける。

「……見損ないました、父上。俺に、やってもいない罪を認めろとおっしゃるのですか? 俺が兄上のことを憎んでいたと、父上もそう思っているんですか!」

激高するザックに、ナサニエルは驚いたようだ。

「落ち着け、アイザック。やっていないことは信じているし、お前とバイロンの仲が周りが思っているほど悪くもないことも知っている。この提案が、お前には不満であろうことも。だが今優先すべきことは、お前の命を守ることだ。今、強硬にお前が犯人だと主張しているのは、アンスバッハ侯爵だ。議会の半分を動かす彼を、私も力で抑え込むことはできない。そのためには準備期間が必要だ」

「冤罪を認めるなど嫌です」

「……アイザック。冤罪じゃない。事故だったと言っているんだ」

「事故でもありません。俺は輝安鉱など持ち歩いていない」

アイザックのかたくなさに、ナサニエルも困り果てる。