「私、クロエさん、好きです」
「……なに言ってるのよ。いいように使われているの、分かっている? 本当にあなたは人が良すぎて心配……」
「クロエ嬢?」
聞き覚えのない男性の声だった。しかし、クロエは面識があるようだ。栗色の髪に空色の瞳。そして傲慢さを感じさせる表情。
「これは、……コンラッド様」
クロエがすっと一歩下がり、深々と礼をする。
慌てて、ロザリーも隣で頭を下げた。
(コンラッド様って……第三王子のコンラッド様?)
「どうして君が城に?」
「カイラ様の侍女として、お仕えすることになりました。行儀見習いですわ」
コンラッドは驚愕で目を見開いた。
「伯爵令嬢の君が、侍女仕えなんて必要ないだろう。それに第二王妃だと、いろいろ支障もあるだろう。仕事をしたいなら、うちの母を紹介してやったのに」
「あら。私の父がカイラ様の後見人をしているのは、ご存知でしょう? そのような身の上で、マデリン様に仕えられるわけがありませんわ」
コンラッドはハッとする。
まるで今初めて知ったとでもいうような態度だ。第三王子は学生だと聞いてはいたが、まさか主要貴族の勢力図が頭に入っていないのだろうかと、ロザリーは驚いた。
「それは……。だが……」



