王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました



 城に住むようになってから一週間。ロザリーにとっては、目まぐるしい一週間だった。
まずは、予想していたとはいえ、マデリンの侍女から来る異常なまでの圧力がすごい。

「あら、平民上がりの王妃様の侍女は、良いわね。気品も家柄もなくても重用してもらえて」

マデリン王妃の侍女は、近隣の伯爵家や子爵家の娘が多い。ロザリーが田舎男爵の娘と知るやいなや、嫌味の応酬が始まった。言い返そうものならクレームが来るので、甘んじて受けていたロザリーだったが、クロエが居合わせると反撃に容赦がない。

「あら、マデリン様の侍女が徒党を組んでこんなところでなにをしているのかしら? 人数がいないとできないような仕事を任されたの? マデリン様は装飾品ひとつとっても莫大にありますものね。ひとつの仕事をするのに、そんなに人数が必要なのかしら。なんて大変なんでしょう」

イートン伯爵は、伯爵位を持つ貴族の中でも上位の立ち位置だ。マデリンの侍女たちは、ロザリーに嫌味を言えてもクロエには言えない。
大抵はクロエに逆らえず黙って去っていく。

「ありがとうございます。クロエさん」

「本当のことでしょう。あなたは働き者で仕事が早いわ。アイビーヒルでは下働きもしてたっていうものね」

「もともと田舎貴族なので、動くのは好きなんです」

「感謝してるわ。あなたがよく働いてくれるから、私は大して動かなくても済むんだもの」

そこをはっきり言ってしまうところがまたクロエらしく、ロザリーはふふと笑ってしまう。