「ですが、コンラッド様だっていらっしゃいます。それに……マデリン様の心境を思えば、申し訳ない気持ちもありますわ。我が子を亡くして、悲しみに暮れておられるはずです。今、一番あなたに支えて欲しいと思っていらっしゃるでしょうに」
うつむいてしまったカイラに、ナサニエルはため息を落とす。
「……私に、マデリンのもとへ行けというのか?」
「そうではありませんが。もし行かれても、止めはしません。私だって人の親です」
一瞬、空気が固まりかけたそのとき、ぽつりと続けたのはカイラだ。
「……行ってほしくないという思いがないとは言いませんわ」
それに、ナサニエルは満足そうな笑みを浮かべる。
「ならば今は座れ。敵地ともいえる王城に戻ってきたそなたを、ねぎらいにきたのだ。茶の一杯くらい、ここで飲んで行っても構わないだろう」
促されて、カイラは座ると、ナサニエルはその隣に腰掛けた。
お茶を淹れるのは侍女の役目だ。ライザに手招きされ、クロエとロザリーは茶道具が用意されたテーブルへと向かった。
「……なにを見せられているのかしらね、私達」
横目でソファに並んで座る陛下とカイラを見ながら、呆れたように言うのはクロエだ。
「お二人の仲が良くて何よりじゃないですか」
のほほんとしているのがロザリーである。



