「アイザック兄上は、バイロン兄上の殺害の犯人だろう? じき、王位継承権もはく奪されるだろう」

「まだ罪が確定したわけじゃありませんわ。よく考えてもみてくださいませ。黙っていても王位が転がり込んでくる立場にいて、バイロン様を害する必要があるのか、私には疑問ですわ。アイザック様はそこまで馬鹿ではな……」

「あの男のことは言うなよ!」

コンラッドが突然激高する。クロエは出方を間違えた自分を呪った。
コンラッド殿下は、気性が荒く、気に入らないとすぐに声を荒げるのだ。

「……そうですわね。コンラッド様にして見れば、大事な兄上様の殺害容疑をかけられている方です。複雑な思いがございますわね。ご不快にさせて申し訳ありません」

クロエは仕方なく自分の方から折れた。そして、「では……」と彼から離れようとしたのだが。

「クロエ嬢、そうつれなくするなよ。せっかく会ったんだ。お茶でも飲まないか?」

「でも……、コンラッド様は講義があるんじゃありませんの? 私も、図書館で調べ物をしようと思ってまいりましたのよ」

「とれなかった講義は後ほど個別授業を受けられるから問題ない」

そんな特別扱いは、今まで王族であろうともされたことはなかったはずだ。学術院でどんな振る舞いをしているのかが予想出来て、余計に辟易する。
クロエは仕方ない……と、ため息をついた。