「あら、お目が高い。これ、新鋭のジュエリーデザイナーが手掛けた新作なのよ」
「素敵ですね。それに面白い」
「銀には、魔を退ける力があると言われるわ。そして四つ葉のクローバーは幸福の象徴なの。大切な人を守り、ふたりがひとつである証として恋人同士やご夫婦にお勧めしているの。あなたもどう? 恋人とつけたら素敵よ」
「そうですね」
ザックは王子様で、もっと豪華な装飾品をつけるべきだろう。が、ロザリーはこれが妙に気に入ってしまった。
銀細工ということでそこまで高い値段でもなく、ロザリーの手持ちでも買えるのもポイントだった。
(ザック様に渡せるのは当分先になるだろうけど。……いいよね。お守りだと思って持っていよう)
その後は、クロエにせかされて、侍女としての支度を整えた。動きやすい靴に、下着類。動きやすいドレスは採寸をしてもらい注文した。それに、ハンカチや身の回りのものに刺繍をするための刺繍糸も買った。
「これで良いかしらね」
「はい! クロエさんが一緒でよかったです。私だけじゃ何を買っていいか分からなかったですもん」
「おかしいわね。侍女経験はあなたの方があるはずなのに」
なかなかに鋭い突っ込みである。ロザリーはえへへと誤魔化し、クロエの腕を取った。
「田舎娘ですもん。王都の長いクロエさんには敵いません」
「では、気の利かない田舎令嬢に、私からの提案よ。そろそろ足が疲れました。お茶にでもしない?」
「はい!」
言い方はきついが、腕は振り払われることはない。
嫌われているわけではないとちょっとうれしくなりながら、ロザリーはクロエとともに伯爵のもとへと向かった。



