王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


「それよりも、買い物はどうするの?」

「ああそうだな。では貴族街に戻ろうか」

馬車は道を曲がり、貴族街の方へと向かった。市場へやって来ると、クロエの機嫌が一気によくなる。

「降りていい? ゆっくり見たいわ。ほら、行くわよ、ロザリー」

「待ってくださいっ」

御者席に乗っていた護衛が、ともについてきて、ふたりの買い物に付き合ってくれる。

「カイラ様の侍女ですもの。身だしなみには気を使わないと舐められるわ。城にはマデリン様の息がかかった侍女がいっぱいいるんだから」

「そ、そうなんですね」

「装飾品は戦闘服のようなものよ。そんじゃそこらの侍女になんて負けるもんですか」

クロエは逞しい。一緒に来てくれるのが心強く感じる。

やがて入った銀細工の店で、ロザリーは一対の首飾りに目を奪われた。
鎖に小さなペンダントトップが通されているシンプルなものだが、そのペンダントトップが一風変わっているのだ。
花びらのような形がふたつくっついて、その根元から一本線が飛び出している。ひとつだと首をかしげてしまうようなデザインだが、向きの違うもうひとつとくっつけると、四葉のクローバーになるのだ。