「改めて、ロザリー、俺とこれからもずっと一緒にいて欲しい。結局俺が次期王になってしまったから、君に降りかかる責任も膨大なものになるだろう。何もしないでそこにいていい、とは言えない。苦労もおそらくたくさんかける。けれど、俺は君に傍にいて欲しい。君がいないと、頑張れないんだ」
そんなことはないと、ロザリーは思う。ザックにはちゃんと責任感がある。皆のために力を尽くすことができるはずだ。
だけど彼は、どこか弱く、人が聞けば頼りないとさえ思うような言葉も漏らす。
それは、弱さもさらけ出してくれているということだ。
そのくらい信頼されていると思えば、うれしかった。そして、自分もすべてを彼に知っていてほしいと思う。
「私を妻にしてくださるなら、ひとつ、知っていてほしいことがあります」
今更、教える必要はないことかもしれない。だけど、家族になるというのなら、隠し事はしたくなかった。
ありのままのロザリーを好きでいてほしいから。
「なんだ?」
「私、実は、犬の記憶があるんです」
ザックは一瞬呆けた顔をしていた。
何を言われたのか、分からないとでもいうような。
少し気持ちが怯んだが、ロザリーはそのまま続けた。
「私が、鼻が効くって言ったじゃないですか。あれって、犬の記憶が戻ったのと同時なんです。たぶんですけど、私の前世って犬なんですよ。リルっていう名前の、切り株亭で飼われていた犬です」
「え……」
「それを知っているのは、レイモンドさんだけです。荒唐無稽な話ですけど、信じてくれました。私とリルは瞳の色が同じなんだそうです。……これで、ザック様に言っていないこと、もう何もないと思います。それ全部知ったうえで、私を王太子妃にしたいって思いますか?」



