「当初は殺す気まではなかったんだろうと思う。弱らせて、補佐する後ろ盾として立ち位置を得ようとしていたのだろう。死なせてしまったのは、アイザックの件と重なったせいだろうな。どちらにせよ、侯爵にとっては甥も私は道具にしか過ぎなかったんだ。おそらく、妹であるお前もな」

「……嘘です。お兄様は私のためになんでもしてくれました。王妃にしてくれて、邪魔な人間も片付けてくれて……」

「そのあたりを、お前にも証言してもらえると助かるな。……義兄上はやりすぎた。悪いが、もう下りてもらう」

「陛下!」

悲鳴のような声を上げるマデリンをその場に残し、ナサニエルはドルーのもとへ戻る。

「アンスバッハ侯爵はここではなかった。執務室へ向かおう」

「陛下、今のお話は……。コンラッド殿下は本当に」

「王家の血は継いでないだろうな。睡眠薬を盛られて、記憶の無いまま女は抱けない。当時マデリンを抱いた記憶はないのだ」

「なぜ、当時からそうおっしゃらなかったのですか」

「……多分、それが私の悪いところなのだろうな」

苦笑しながらナサニエルが部屋を出る。と、エントランスのほうが騒がしい。
どうやら、アイザックたちが門を突破し、侵入してきたようだ。

「行くぞ」

「はっ」

ドルーを従え、ナサニエルもエントランスへと駆けだした。