王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました



ナサニエルとカイラ、そしてロザリーは王都北側で出迎えの近衛兵と合流した。
近衛兵は、ほぼナサニエルの直属兵である。
彼の護衛も近衛兵団の一員であり、彼らを通して内密にやり取りを続けてきた。

「陛下、よくご無事で」

近衛兵団の隊長ドルーは、ナサニエルと同年代の男だ。あまり多くを語ることのない武骨な男だが、王家への忠誠心が強く、ナサニエルの懐刀ともいえる。

当初、ナサニエルから『自分は城に戻るつもりはなく、今後はアイザックを支持し助けてやって欲しい』と言われた時は、時代の終わりを思って肩を落としたものだが、一転、『アイザックと協力し、国を立て直すことになった』と連絡が入ったときには、年甲斐もなく狂喜乱舞した。
ドルーは、近衛兵団をまとめ上げ、侯爵一派への協力のボイコット、それと、城への潜入経路の確保など様々な準備を続けてきた。

「ドルー。感動の再会は後だ。そろそろ、正門からアイザックが平民を引き連れて、開門を要求し始めるはずだ。侯爵たちがそちらにかかりきりになっている間に、裏門から中に入るぞ」

「はい。近衛兵団には、アンスバッハ侯爵からの要請には従わぬよう伝えてあります。まずは近衛兵団宿舎に入りましょう」

「身を隠して城内に入り込みたい。近衛兵の制服を貸してくれ。それから、カイラはしばらく宿舎で預かって欲しい」