アイザックが本当に生きているのならば、御者の報告は嘘だったということになる。
ならばナサニエルは?
彼が生きているのが一番まずい。
コンラッドを王座に就かせるための正当性が失われるばかりか、カイラとナサニエルの馬車を襲わせたことが立証されれば、さすがに自分の立場も危うくなる。
アイザックの一団は、城門に差し掛かっていた。
民衆を鼓舞しながら、向かってくる黒髪が、侯爵がいる国王の執務室からよく見える。どうやら本当にアイザックのようだ。
「おのれ……。あの平民の息子は、どこまで私の邪魔をする気だ」
平民たちの要求は、平民からも議員を出し、貴族だけに有利な政治をやめることだ。
議会改革だけなら、呑める。
平民議員が数名入ったところで、決議は多数決だ。結局のところ、平民に有利にはならない。
「交渉ですませるか? それとも、あのアイザックは偽物だと言って平民もろとも弾圧してしまうか」
幾つかのパターンをシミュレーションしてみるがどれも得策ではない。
ナサニエルもアイザックも死んだという前提で、コンラッドを王にする計画を練ってきたのだ。いきなり土台を覆されると、さすがの侯爵にもいい案が浮かばない。
「ええい、コンラッドはまだか! もういい。私が呼びに行く!」
こんな時まで、役に立たない。
侯爵は苛立ちを壁にぶつけ、それから廊下に飛び出した。コンラッドの部屋は三階だ。イライラしたまま階段を足早に上る。
何をしているのだか知らないが、今、正しく指揮を取れなければ誰もついてこない。
王となるのなら絶対に引いてはならない場面だとコンラッドに分からせなければならないと思った。
ならばナサニエルは?
彼が生きているのが一番まずい。
コンラッドを王座に就かせるための正当性が失われるばかりか、カイラとナサニエルの馬車を襲わせたことが立証されれば、さすがに自分の立場も危うくなる。
アイザックの一団は、城門に差し掛かっていた。
民衆を鼓舞しながら、向かってくる黒髪が、侯爵がいる国王の執務室からよく見える。どうやら本当にアイザックのようだ。
「おのれ……。あの平民の息子は、どこまで私の邪魔をする気だ」
平民たちの要求は、平民からも議員を出し、貴族だけに有利な政治をやめることだ。
議会改革だけなら、呑める。
平民議員が数名入ったところで、決議は多数決だ。結局のところ、平民に有利にはならない。
「交渉ですませるか? それとも、あのアイザックは偽物だと言って平民もろとも弾圧してしまうか」
幾つかのパターンをシミュレーションしてみるがどれも得策ではない。
ナサニエルもアイザックも死んだという前提で、コンラッドを王にする計画を練ってきたのだ。いきなり土台を覆されると、さすがの侯爵にもいい案が浮かばない。
「ええい、コンラッドはまだか! もういい。私が呼びに行く!」
こんな時まで、役に立たない。
侯爵は苛立ちを壁にぶつけ、それから廊下に飛び出した。コンラッドの部屋は三階だ。イライラしたまま階段を足早に上る。
何をしているのだか知らないが、今、正しく指揮を取れなければ誰もついてこない。
王となるのなら絶対に引いてはならない場面だとコンラッドに分からせなければならないと思った。



