「王城にいる警備兵と近衛兵をすべて集めろ」
城に多くいるのは近衛兵だ。王族を守るための騎士で、宿舎も城の敷地内にある。
取り締まりといった、国内全体の警備を行うのが王国警備隊で、こちらは城だけでなく国全体に散らばっている。今も、王都の王国警備隊は、平民兵を抑えるために活動しているはずだ。
「それが、……近衛兵がボイコットを起こしているのです。アイザック様がいるのならば、正当な次期王に従うと」
「正統な王となるのはコンラッドだ。仮に平民を率いているのがアイザックだとしても、すでに臣籍降下した身ではないか」
「私もそう申し上げましたが、近衛隊長ドルーに反対されました。そもそも王子の臣籍降下には納得しておらず、法にのっとり、第三王子コンラッド様よりも、第二王子のアイザック様を全面的に支持すると言っています」
侯爵は舌打ちする。ここにきて、コンラッドの人望の無さが効いてくるのか。
「ではいい。王国警備隊を集めろ。役に立たない者はいらん。それから、コンラッドを呼んでくるんだ。次期王として、暴動を弾圧するのはコンラッドの役目だ」
「はっ」
侯爵はいら立ちを隠せず、室内を歩き回る。
役に立つとは思えないが、コンラッドを表に立たせなければならない。あくまでも、王となるのはコンラッドだ。アンスバッハ侯爵には、そのための血が無いのだから。
「くそっ」



