「ほう、あの令嬢が、コンラッドの婚約者になったのか?」

バイロンが興味深そうに問いかける。

「俺の妹をご存知で?」

「学園の祭典で家族が来るときがあったろう。俺がアイザックと君に嫌がらせをしたのを見て、『アイザック様をいじめるのは勝手ですが、お兄様に手を出したら許しません』と小さかった彼女に怒られたことがあるよ。ずいぶんと口調のはっきりした令嬢だと感心したものだ。あれでコンラッドより年下だというのだから驚いたとも」

「ふうん。まあ自慢の妹ですよ。あとは結婚さえしてくれればとは思っていましたが、コンラッド様にはやれません。戻ったらどうあっても婚約破棄させますからね」

ケネスの談に、バイロンは少しばかり頬を緩めた。

「それにしても、ケネスは兄上にどうしてこんなに打ち解けたんだ? こうして会うようになったのはここ最近の話なんだろう?」

素直に疑問をぶつければ、ケネスはなんてことのないように笑う。

「もう王太子殿ではないし? せっかくだから思ったことをすべて言わせていただいただけだよ。叱られるかと思ったら大笑いされて、こっちも毒気が抜けたよね」

なるほど、いろいろ吐き出した結果のことらしい。
なにせ、兄とケネスが仲良くなってもらえるのはありがたい。

「じゃあ、先のことを考えようか。みんなの考えを聞かせて欲しい」