「……嘘みたいにお膳立てが整っているってわけだ。誰が仕組んだわけでもないのに」
「私はこういうのを運命と呼ぶのだと思うよ。望むと望まざるとにかかわらず、運命には飲み込まれるものだ。もちろん、お前ひとりを荒波に放り出す気はない。私が差し出せるのは今のところ頭脳だけだが、お前よりは損得計算が上手な自覚はあるよ」
「……そうだな」
ザックからは呆れたような息しか出ない。
父も、兄も、自分勝手で不器用で、――でも、優しい。
「俺の望みは、この国を平民も貴族も正しく生きる国にすることだ。それぞれの領分で責任をしっかり果たし、支え合える、そして愛する人との平和に暮らせる国に。ケネス、俺に、それができると思うか?」
ザックはケネスに問いかける。
いつだって側にいて、時に前で手を引き、うしろで支えてくれた彼を、ザックは一番信用している。
ケネスは肩をすくめて笑いかける。
「これだけ協力者がいるんだ。何とかなるんじゃないか? というか、しなきゃ、だろう」
「そうだな。それに、俺は父上のことも見捨てるつもりはない。そんなことしたらまた母上が大変だからな」
「それとクロエのこともお願いしたいね。あの子は家族思いの子だよ。コンラッド様の婚約者になったのも犠牲心からだろうからね」
「もちろんだ」
「私はこういうのを運命と呼ぶのだと思うよ。望むと望まざるとにかかわらず、運命には飲み込まれるものだ。もちろん、お前ひとりを荒波に放り出す気はない。私が差し出せるのは今のところ頭脳だけだが、お前よりは損得計算が上手な自覚はあるよ」
「……そうだな」
ザックからは呆れたような息しか出ない。
父も、兄も、自分勝手で不器用で、――でも、優しい。
「俺の望みは、この国を平民も貴族も正しく生きる国にすることだ。それぞれの領分で責任をしっかり果たし、支え合える、そして愛する人との平和に暮らせる国に。ケネス、俺に、それができると思うか?」
ザックはケネスに問いかける。
いつだって側にいて、時に前で手を引き、うしろで支えてくれた彼を、ザックは一番信用している。
ケネスは肩をすくめて笑いかける。
「これだけ協力者がいるんだ。何とかなるんじゃないか? というか、しなきゃ、だろう」
「そうだな。それに、俺は父上のことも見捨てるつもりはない。そんなことしたらまた母上が大変だからな」
「それとクロエのこともお願いしたいね。あの子は家族思いの子だよ。コンラッド様の婚約者になったのも犠牲心からだろうからね」
「もちろんだ」



