「なにを考えているんだ。なぜ俺が父上を制しなければならない」
「おまえが適任だからだろう。民の人気があり、王家の血を継いでいる。変革してもなお、王政を存続させられる人物がいるとすれば、それはお前だけだ」
たしかに、中途半端なザックの血筋がこれ以上活きる場所はない。
「それに、おまえが王となるならば、父上のご寵愛しているカイラ妃もおまえの母親として今の生活を維持できる。父上の憂いは、おまえが王となることで晴れるんだ。父上は俺を死なせる決断をしたときに、自分も死ぬことを覚悟したのだと思う。すべては自分の咎だと考えておられるのさ。伯父上を抑え込むことができなかった、とね。……俺は、それが父上の望みだというなら、叶えて差し上げればいいと思っている。もちろん、命は救ってほしいが」
バイロンがチラリとケネスを見る。話せ、という意図を受け、ケネスが口を開く。
「俺も賛成だよ。この国は大きくなりすぎたんだ。おかげで国王の采配だけでは動かせなくなった。ナサニエル陛下は暴君にはなれない。それゆえに、臣下をうまく諫めることができないんだ。申し訳ないけれど、俺は彼を愚王だと思う。もっと早く、どんな理由でもいいから、アンスバッハ侯爵を国政から追い出すべきだったんだ」



