「それは……そうですが」

それでも、ロザリーは諦めきれない。なんとかして伯爵を説得しようと、考えを巡らせる。
……が、助けは意外なところからやって来た。

「お父様がそこまで心配なさるのなら、私が一緒に参りましょう。屋敷で暇を持て余しているくらいなら、陰謀渦巻く王城で侍女の真似事でもしているほうが、楽しそうですし。ロザリーが危険なことをしでかさないよう、私がしっかり見張って差し上げます」

「クロエ?」

その発言に目を見張ったのは、ケネスと伯爵だ。

「なにを馬鹿なことを。クロエ。お前に城仕えなど無理だよ」

「そうだ。お前は話を聞いていたのか? 私は可愛い娘を危険なところにやるつもりなどない」

こぞって反対してくる父と兄を見て、クロエは満足そうに微笑む。

「あら。だからこそですわよ。私が一緒にいれば、お父様もお兄様もロザリーを死に物狂いで守りますわよね? 下手にこの屋敷に置き去りにするよりも、目が届くというものでしょう。それに、常に互いの目があるのは防犯上効果的だとは思いませんこと?」

「……まあ、たしかにそうだが」

納得するケネスに、いまだ反対の姿勢を見せるのは伯爵だ。

「駄目だ! お前になにかあったら、私はどうすればいいんだ」

「どうもこうも。そのときは私に何かした人間を捕まえて罰してくださればいいのです。お父様は過保護か過ぎます。結婚する気がない以上、私も働かなければと思っていたところです。ちょうどいいわ」

クロエがにっこりと笑う。ロザリーは思わず彼女に抱き着いた。