王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


死体を確認させろとまで食い下がる人間はいなかった。母親であるマデリンも、体内の毒が体中に斑点として現れたと言われ、しり込みしたのだという。
遺体は土葬され、これにより、バイロン王太子は社会的に死亡した。

ジョザイアは一度、死体置き場に棺を移し、死体を運び出す際に自分の馬車へと移し替えた。
呼吸穴こそ作ってあったが、体調の悪いバイロンが棺の中で時を待つのは並大抵のことではない。無事に生きてこの別荘までこれたのは彼の生命力のたまものだ。

「そうして、ここに移ってからはずっと療養しておられます。幸い、バイロン様が自ら吐き出してくださったことで、毒は致死量にはならなかったようです。少しずつ食事の量を増やし、ゆっくり休養を取ることで、起き上がれるくらいまで回復してきたところです。もちろん、陛下にも報告はしています。ですが、アンスバッハ侯爵やマデリン様に気づかれてはまずいと、直接ここに来てはおられません」

ジョザイアがそう言い、バイロンはザックを見つめる。

「まあ、そういうわけだ。だから今の私はただのバイロンで、もう王子でもない。だがおかげさまで命はとりとめたようだ」

「それでも、俺にとってあなたは兄上です。まあ、俺ももう王子ではありませんしね」

「それなんだが……」

バイロンは一息つくと、体を傾け、アイザックと目を合わせる。