「……というわけなんです」

ロザリーの声に、ケネスとイートン伯爵は目を見合わせる。クロエはふたりの動向に興味があるようで、視線だけを向けて発言を待っている。
先に口を開いたのはケネスの方だ。

「まあ、君の安全を考えるならやめておけと言うけれど、残念ながら俺の優先事項はザックの精神状態の安泰の方なので、君には城に行ってもらった方が助かるかな」

「そうだね。まずはザック殿の容疑を晴らしたいところだ。何せ彼は本当にやってはいないのだからね」

「だったら、私が行った方が何かと役に立つかもしれないですよねっ? 良いですか、伯爵様っ」

だが、イートン伯爵は顔を曇らせる。

「そうだろうね。だが、私は君のおじい様から君を預かっている責任もある。例えば娘が……クロエが危険な場所に行くというなら、私は迷いなく止めるだろう。そう思えば、君を行かせるわけには行かないよ」

「そんな!」

予想外の反対に、ロザリーは声を上げた。

「お願いします。危険があったってかまわないんです。私、ザック様もカイラ様もお守りしたいんですもの」

「君はおじい様……ルイス男爵の気持ちを考えたことはあるか? 妻と息子夫妻に先立たれるなんて、これ以上ない不幸だ。彼は君が幸せに生きることを願って、私に託したのだろう? ここでもし、君になにかあれば、彼の残りの人生を苦しめることになるとは思わないのか?」