すごくドキドキしてきて。



終盤に差し掛かった時、野芝さんが俺を呼んだ。



渡されたマイクを握って、緊張しながら近づく。



「リトから歌え。合わせる」

「終わったら泣きます」

「ははっ、泣き虫だな、お前」



俺がリトルヘブンで動画をあげた曲。



今日、いちばんの歓声と、いつもと違う音の中、思い切り歌う。



目が合った野芝さんと、合わせて歌う贅沢な感じ。



嬉しすぎて、どうしたらいいかわからなくなる。



歌い切った瞬間、涙が溢れて、そのまま手で顔を隠した。



「ね?可愛いヤツでしょ?じゃ、お前は横で見てなさい」



言葉にならず、頷いて、頭を下げて横にはけた。



ヤバすぎ。



「泣くなよ、バカ」

「嵐生〜…、俺、幸せすぎるっ」

「カッコよかった。さすが理音だな」



ペットボトルの水を渡しながら、俺の頭をガシガシと撫でる。



あの日、嵐生が俺に声をかけてくれなかったら、俺はこんな感情知らずに生きていた。