お父さんの本当の名前すら、あたしは知らなかった。



「竹内 康太だよ」

「えっ、じゃあ、あたしは昔、竹内だったんですか?」

「そうだよ。可愛かったんだよ、由乃。由乃って名前も、俺が付けた」

「知らなかった…」

「相当嫌われてるからね、由布子に」

「それは…そうですね」

「はははっ、まぁ、由布子がどこでなにしてようが、俺は興味ないけど。だけど、俺の歴代嫁の中でいちばんいい女だったのは確か」

「何人いるんですか、歴代の奥さん…」

「4にーん」



それは呆れるよね、お母さん…。



しかも今、独身なんだって。



クズって意味が、よくわかりました。



「それで、どうしてあたしに会いたいと…」

「お巡りさんに捕まっちゃうかもしれないから、今のうちに会っておこうかなってね。まぁ、捕まらないとは思うんだけどねー」

「そ、そう…ですか…」

「もし、捕まったら、出てこれないかもしれないじゃん?さすがに親子の再会が刑務所とか、残念すぎて話になんねーよってこと。来てくれないでしょ?」

「あぁ、行きません」

「だから、会いたかったわけよ」



なんで捕まりそうなのかなんて、聞きたくなかった。