気持ちいいことじゃない。



ただ、お互いに求め合うだけの行為。



そうだったはずなのに。



「理音くんっ、待って‼︎なんかっ…怖いのっ…」

「ははっ、『気持ちいい』の間違い、それ」

「ヤダっ‼︎くぅっ…うぁっ…」



理音くんから与えられる恐怖に似た『気持ちいい』が、何度も押し寄せて。



自分の体が、何かに乗っ取られてしまったんじゃないかと思うくらい、おかしくなった。



体、ガクガクする…。



眠くて、今にも目を閉じそうなあたしの背中に、軽く歯を立てて、噛み付いて、キスして。



「由乃の背中…気持ちいい…」

「んっ…噛むの…ゃめてぇ…」

「痛かった?痕ついちゃった…」



服着たいのに、そんな気力もない…。



も、眠い…。



「由乃?なんで寝ようとしてるの…?」

「起きて…たくない…」

「好きにさせてって言ったじゃん」

「は、い…?」

「このままの体制がいいの?後ろから?痛くしないように頑張るね」



理音くんは、リスの皮をかぶったライオン。



修学旅行の『朝まで寝かさない』を『冗談』だと言った有言実行の男の『冗談』は、絶対信じないと心に誓った。