【理音】



小さな頃、母さんと泉と、近所の夏祭りに行った。



泉は小さな頃から子役をしていて、そこそこ有名だったせいか、どこに行っても注目を浴びてしまって。



父さんがこういう場所に来てしまうと囲まれてしまう。



だから、あまり楽しかった記憶はない。



そんな思い出しかなかった夏祭りが、今はものすごく楽しい。



なにより、浴衣の雛森が、ありえないほど可愛いんだ。



『俺の彼女だよ』って、自慢して歩きたいほど、今日の雛森は可愛い。



「あれ?嵐生とか、いなくない?」

「うん、結構前からはぐれてるんだよ」

「なんで⁉︎」

「理音くんが出店に引っかかってばっかりだからかな?」

「ウソっ⁉︎気づかなくてごめん…」

「いいよ。花火の時に合流できると思うし」



なんてことだ。



夢中になってたら、みんながいなくなっていた。



可愛すぎる雛森のせいで、テンション下がんないんだもん…。