だけど、これが理音くんの『素』なんだからタチが悪い。



恥ずかしすぎる、誉め殺しの刑…。



「浴衣、可愛い…」

「いいねぇ、浴衣。夏の醍醐味って感じ」

「可愛くない?ヤバくない?どうしよ、雛森、本気で可愛い」



お願いだから、もうやめてくださいっ…。



耐えられなくて下を向けば、天の声が聞こえた。



「あたしにも言いなよ、理音」

「あっ、紗雪。久しぶり」

「感想ないの?あたしも浴衣なんですけどー」

「紗雪は…極道の女みたいでいいと思うよ」

「温度差っ‼︎って、極道ってどういう意味⁉︎」



紗雪のことは褒めないの…?



リトくんの『可愛い』独り占め…。



顔、熱い…。



「紗雪ちゃん、マジ美人」

「えっと、タカヤくんとスバルくん?だっけ?」

「タカとスバルでいいよ、紗雪ちゃん」

「あたしも紗雪でいいよ。今日はよろしくねー」



不意に握られた手。



繋がれた手の本体を見上げると、目がなくなっちゃうんじゃないかと思うほどのふにゃっとした笑顔。



理音くんが可愛いんだよ…。