俺様天然男子

【由乃】



イスをふたつ、向かい合わせに置いた理音くんに、正面に座らされた。



いつも動画で見てるマイクじゃなく、普通の見た目のマイク。



スタンドにそれをセットして、壁にかかっていたギターを手にした。



リクエストしたのは、紗雪が薦めてくれたあの切ない曲。



女の人の歌だけど、理音くんが歌うと、理音くんの歌に聞こえる歌。



「これって、アコギ?授業でもやったヤツ」

「そうだよ。ちょっと待ってね」



チューニングって、チューナー使ってやるんじゃないの?



慣れてる感じがすごい…。



「ギターも弾けるんだね」

「うん。ここにある楽器は全部弾ける。よし。あー…音大丈夫?デカくない?」

「だ、大丈夫」

「ならよかった」



笑った理音くんが、ギターで前奏に入った。



えっ、ギターうまっ…。



スッと息を吸った理音くんから聴こえてきた甘い透明感のある声。



やばい、鳥肌やばい。