やがて、会議が始まり、俺達は、目の前に据え付けられたモニターに注目する。


事前の予想通り、大澤には1巡目から指名の声が、それも3球団から上がった。奴の名前が読み上げられる毎に、眩いばかりのフラッシュが、大澤に浴びせかけられる。


そして、抽選の結果、Sが奴の交渉権を獲得。千葉県出身で、在京球団を希望していた大澤は、ホッとしたような笑顔を見せ、その表情に、また多くのフラッシュが向けられる。


やがて、大澤の会見が始まった。今の心境、目標とする選手や数字、指名球団Sに対する印象などを矢継ぎ早に聞かれた大澤は、堂々たる受け答えで、記者の質問に答えている。


(さすがはエース。)


隣で俺は素直に思っていた。会見は10分ほどで終わり、大澤は部長に伴われていったん退席。これから両親に連絡したり、指名球団の挨拶を待ち受けたり、いろいろ忙しくなるはずだ。


「大澤、おめでとう。」


その直前、俺と船橋が手を差し出す。


「ありがとう。」


その手を順番に握り返しながら


「ツカ、お前もSに来い。また俺の球を受けてくれよ。」


なんて言って来る大澤。


「バカ。俺はお前と違って、指名される保証もないし、第一Sなんて、挨拶にも来てくれてない。」


と俺が答えると


「なんだよ、俺は誘ってくれないのかよ。」


と船橋。


「一緒にやりたいのは、ヤマヤマだが、Sは外野手の層が厚いからな。と言って、敵に回すのは嫌だから、お前は違うリーグへ行け。」


「自分が決まったから、言いたい事言いやがって。」


そんな会話を交わして、笑い合うと、大澤は出て行った。


「アイツ、満里奈(まりな)ちゃんに連絡する暇あんのかな?」


奴の後ろ姿を見送りながら、船橋が言う。満里奈ちゃんというのは、大澤の彼女の名前。


「どうだろうな?落ち着くまで、なかなか難しいんじゃないか。」


そう答えながら、俺は自分の彼女の顔を思い浮かべる。今日は、あいつは親達とではなく、親友達と会議の様子を見守ると言っていた。


(由夏、大澤は決まったよ。俺もなんとか、何処かに引っかかってくれるよう、祈っててくれよ。)


俺はいつものように、心の中で、あいつに語り掛けていた。