「聡志・・・私、年明けから、こっちに来てもいいかな?」


「えっ?」


突然の言葉に驚く俺。


「だって、聡志の大事な年になるんでしょ?だったら私、あなたを側で支えたい。そうじゃなきゃ、私、何の為にあなたと付き合ってるんだか、わからないよ。あなたが一番苦しい時、大事な時に側にいないんじゃ、私は聡志の人生パートナーとしての価値、ないじゃない。」


「・・・。」


「引き継ぎや残務整理があるから、今すぐってわけにはいかないけど、年内で片付く。だから、新年の元日は仙台で一緒に迎えよう、2人きりで。」


そう言って、少し小首をかしげて、俺を見る由夏。そんな彼女を黙って見つめる俺に、由夏の表情が不安に染まって行く。


「聡志、どうしたの?私がこっちに来たいって言ってるんだよ。喜んでくれないの?」


「何があったんだ?」


「えっ?」


「お前が本心から、そう言ってくれてるんなら、嬉しいに決まってる。」


「何、言ってるの?本心に決まってるじゃん。」


と答える由夏に


「さっきも言ったけど、お前、昨日からずっと変だ。いつもの由夏じゃない。もう1回聞く。何があったんだ。」


と厳しい表情で言う。その俺の顔を見た由夏は


「聡志には敵わないな。」


と言いながら、フッと笑みをこぼした。


「ウチの会社、危ないんだ。」


「えっ?」


「親会社から、専属契約打ち切られることになっちゃってさ。もう大騒ぎ。社内の雰囲気は最悪だし、先の見通しなんか、全然立たないし。それで・・・はっきり言って、嫌気差しちゃったんだよね。」


「・・・。」


「だから、私もいい歳だし、そろそろ聡志に、あの約束、実行してもらってもいいかなぁなんて思って。そう言うことだから、よろしくね。」


「ふざけるな!」


由夏が、そう言い終わった途端、俺は大声を出していた。


「聡志・・・。」


驚いたように、俺を見る由夏に


「俺をバカにするのも、いい加減にしろよ!」


と怒りの口調で言う。そんな俺を見た由夏は、慌てたように


「ごめんなさい。私、今、最低なこと言っちゃった。本当にごめんなさい・・・。」


シュンとして、俺に頭を下げる由夏に、ますます腹が立って


「違ぇよ。」


とまた声を荒げてしまう。


「なんで、本当のこと、言ってくれないんだよ!」


「聡志・・・。」


そう言った俺の顔を、由夏は見つめる。