長井さんに言われた“足りてないもの”は今でも見つけられてない。


ダンスも歌も全て完璧にこなしてきたのに、何が足りてないんだ?

考えても分からない。


焦っても見つからない。

だから、今は俺らしくアイドルしてる。



「ねぇ、そろそろ離してよ」

「やだ」

「景斗くんがかっこよくて心臓がうるさいんですぅ」

「もっとうるさくしてやるよ」

「い、意地悪っ」

二葉は涙目になって、抵抗した。

どんな二葉でも可愛いと思ってしまう俺は重症だろうな。

「ね、景斗くん」

「なに?」

「わたしと居てくれてありがとう」

「な、なんだよ。いきなり」

「えへへ。景斗くんが遠くに行っちゃいそうだから言ってみたの」

「俺は遠くに行かねぇよ…」

二葉をさらに強く抱きしめた。

「お前が嫌がっても離さないからな」

「嫌だよっ!寝れないよ!」

「一緒に寝ればいい話じゃん?」

「全然よくないっ!もう景斗くんと絶交だからね!?」

「絶交しちゃっていいんだ?俺より二葉が悲しむんじゃない?」

「……うっ、そうだよ。景斗くんと話せないのは辛いんですぅ」

何だよそれ…。

いきなり素直になりやがって。