俺はその手を離すと、水を飲んだ。
落ち着け、本番前に喧嘩とか洒落になんねぇぞ。
「二葉ちゃんは景斗のこと、どう思ってるか聞いたことあるか?」
ねぇよ。
「一回聞いてみたらどうなんだ?」
「…また、あいつを困らせることになるから聞かない」
「それってお前が怖いんじゃねぇの?お前が“幼なじみ”っていう立場を失うのが怖いんじゃねぇの?」
怖い?
俺が?
両親が死んでから怖いものなんて何もなかった。
そんな俺が怖がってるだと?
「“幼なじみ”を失ったら、二葉ちゃんといられる口実が無くなるって思ってるんだろ?」
そうだよ。
だから、ちゃんと告白したんじゃん。
「二葉ちゃんは景斗の所有物じゃないからね?」
そんなこと、分かってるよ。
いつかあいつだって、誰かに恋することぐらい分かってる。
でも、どうしてもあいつだけは譲れねぇ。