「遅かったな」

景斗は不機嫌なのか、目を合わせようとしなかった。

「…話はなんだ」

「二葉の話だ」

だろうな。

「…安心しろ、俺は振られた」

景斗の顔は変わらず固いままだ。

「…どうしてもお前がいいみたいだ」

「当たり前だろ」

こいつ、相当自分に自信があるな。

「だって、俺と二葉は両思いだし」

なんだ、そんな根拠のない自信だったのか。

「…気持ちなんて変わるものだ。永遠などない、そう思った方が身のためだ」

「俺たちにはあるんだよ。恋人になる前からの絆もある。俺たちは人間的に惹かれあったんだ」

そうだといいけどな。

「…俺は景斗も平岡も好きなんだ。だから、幸せになって欲しい」

「んなこと言われなくても分かってる」

「…それに平岡を泣かせたら、奪いに行くからな」

「は…?」

それが言えて満足した俺は家に帰ることにした。

「…お前も早く帰れよ」

「お、おい!冬真、待てよ!!」

急いで荷物をまとめる景斗を横目に俺は入り口を出た。