わたしは気づいたら走っていた。


その場から逃げたくて、ただ走っていた。



こんなの見たくなかった、見たくなかったよ!!!





無我夢中で走っていると、誰かに腕を掴まれた。

振り返ると、腕を掴んでいたのは冬真くんだった。

冬真くんの息が切れていて、心配そうな顔をしていた。

「…平岡、大丈夫か?」

わたしは堪えきれなくて、ぽろぽろ泣き出してしまった。

「無理、みたい…。景斗くんが誰かとキスするなんて、わたし…っ」

冬真くんはわたしを抱きしめた。

「景斗くんはわたしのことを好きでいてくれるって分かってる…だけどっ…」

ただ抱きしめて、何も言ってこなかった。

「見るの、辛かった…」

わたしの話をちゃんと聞いてくれた。

それで心が少し軽くなったんだ。