僕の背後にナリスマシ

 妙高と周治の周辺でDJ達とその仲間がやっているのではと言うような嫌がらせが増えてきた。まず非通知電話が増えた。頻繁に車や原チャリで付け回される。一戸建に住んでいる妙高は知らない人物が家の周りをうろうろし始めた。ひどい奴になると棒で家の周りをパタパタパタッと擦りながら一周する。
 妙高は近くの交番に相談した。警官は〈 経費がかって申し訳ないんですが、大手警備会社の監視カメラを設置して画像が残れば不法侵入や器物損壊で対処できます。〉と答えた。

 ラジオで一番とんでもないことを言っているのはイエローだ 。
〈ボクは一生懸命やっているんです。どうして足を引っ張られるのか分かりません。地元を盛り上げる企画だって考えているんです。それなのに地元を盛り上げる小説を書いて渡してくれない。〉

「おい、オマエは地元を舞台にした小説を書いているのか。」
 周治が妙高に尋ねた。
「書いてるよ、所々。イエローは随分と内容に詳しい。」
「だろうな。で、どんな話だ。」
「妖怪大集結だ。この街が県外からも移住者を募る。すると人間以外に妖怪もやって来る。ただそれだけの話だよ。」
 妙高が〈ただそれだけの話だよ。〉 という物語は大抵奇想天外で面白い。
「 妖怪たちは常連さんかい。」
「 そうだ 雪女、鎌鼬(かまいたち)、河童、轆轤首(ろくろくび)唐傘(からかさ)に座敷童もいるぞ。外国からは吸血鬼、狼男、人魚もやって来る。」
「 おいおいおい、人魚って妖怪なのか。」
「美人の紅一点だ。 」
「じゃあ轆轤首は男かよ。」
(いや)、オネエだな。」
 周治は妙高の話を聞いただけで興味を持ち始めた。
「 内容がまとまったらゆっくり聞かせてくれよ。 まぁ、足を引っ張ってるのはイエローだからお前が文章化することはないかもしれないな。」
 この会話が盗聴されていたらイエローは文章が欲しくてしょうがないだろう。