貪欲に愛を欲す

それなのに、何故か身体が動いたのだ。

「へぇ」
とニヤニヤする愁にムカつくので
座席を蹴る。

「ちっ」
舌打ちを吐いて、煙草に火をつける。

肺に空気を入れると、何だか落ち着く。
こんなことでしか落ち着くことの出来ない自分に失笑する。


“黒崎組若頭”
テッペンに近い立場にいる自分。

欲しいものなら何でも入る。
願いなら大抵叶う。

故か、幼い時から世界が色褪せて見えた。

周りには俺を若頭としてしか見ない奴らばかりで、いつの日からか人と関わる事を最低限にした。
何をしても楽しくも悲しくもなく、
表情が無くなった。
馬鹿なことをしても心から笑えない。
残酷なことも平気な顔でやれる。

そんな俺に、父親が話してくれたことがある。

「鷹人。お前はお前のままでいい。
笑いたくないなら笑うな。表情も感情も作るものじゃねぇ。…父親なのに情けねぇな。俺にはお前の心を温めてやることは出来ねぇ。

…お前は俺に似てるよ。
俺が、母さんに出会うまでの俺に。
…お前も、唯一の女を見つけろ。
そいつがお前の心を温ためてやってくれる。」

そして、その唯一の女は
一目見れば分かると言った。