続いて立ち上がる暇もなくあたしの体はエレベーター内に引きずり込まれていたのだ。


「嫌!!」


悲鳴を上げてエレベーターの扉へ手を伸ばす。


しかしそれは無情にも閉められてしまった。


『美知佳!!』


スマホから充弘の声が聞こえて来ても返事ができなかった。


箱の中で電気がチカチカと点滅をはじめ、あたしは壁に自分の背中を押し付けた。


「嫌……嫌……こないで!」


誰もいない空間へ向けて叫ぶ。


明暗を繰り返す箱の中、暗闇に包まれた瞬間だけ見える人影があった。


今日も、まただ……。


悲鳴が喉にはりつき、頬がひきつる。


涙はとめどなく溢れ出しているはずなのに、人影だけはしっかりととらえていた。


人影はまるで壁のシミのようにそこに存在した。


最初はノッペリとしたイラストのようで、電気が点滅するたびにそれは立体へと変化して行く。