エレベーター

気が付けば恐怖で涙が滲んできていた。


右手でスマホを握りしめ、左手で溢れて来る涙をぬぐう。


そして、ようやく歩き出した。


ずっとこの世界にいるわけにはいかない。


得体の知れない世界だから、もしかしたらどこからか攻撃を受けるかもしれない。
今すぐにでも脱出したい。


そんな気持ちが強くなっていた。


廊下に出てからはほとんど走って古い校舎の階段へと向かっていた。


階段に差し掛かると1段飛ばして転がるように降りていく。


古い校舎は相変わらずジットリとした空気で、あたしの体はだんだんその重さに足が遅くなっていく。


それでもあたしは足を止めなかった。


一気に一階まで駆け下りるとさすがに息が切れていた。


もう、目の前に昇降口が見えている。


あそこまで行くことができれば……!


あたしは願うような気持ちで足を進めた。


エレベーターに視線は向けず、一目散に駆け抜ける。


そして、エレベーターの前を通り過ぎた。