エレベーター

『美知佳、ビデオ通話に変えてくれ』


充弘の声がして、あたしはすぐにスマホを操作した。


画面上に充弘の顔が現れると少しだけ気持ちが楽になった。


しかし、充弘の後方に映っている景色に絶句してしまう。


そこに映っていたのは間違いなく1年B組の教室だったのだ。


あたしが今立っている教卓も写っている。


しかし、そこにあたしの姿はなかった。


『そこは一体どこなんだ……?』


姿は映っていないけれど、幸生の声が聞こえて来た。


「やっぱり、あたしが1人で違う世界に来ちゃったんだ……」


『大丈夫だよ美知佳。絶対に元の世界に戻れるから!』


一穂が青ざめた顔で、一生懸命声をかけてくれる。


「元の世界に戻る方法って……エレベーターに乗る事だよね?」


あたしの質問に、誰も返事をしてくれなかった。


今まで何度か経験したからもうわかっている。


あたしが1階からエレベーターに乗り、3階で降りれば現実世界に戻れるのだ。