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「美知佳、大丈夫?」


誰よりも早く教室に入って突っ伏していたあたしに、一穂が声をかけてきた。


顔をあげると一穂が驚いた表情を浮かべる。


「ちょっと美知佳、ひどい顔だよ!?」


「うん……昨日全然眠れなかったの」


そう言い、自分の頬を両手でかくした。


出かける前にコンシーラーで目の下のクマは隠したけれど、それだけでは疲れは隠しきれていなかったみたいだ。


「そっか。あんなことがあったんだもんね……」


一穂は心配そうに眉を下げている。


「でも、もうエレベーターには近づかないし、大丈夫だよ」


「うん……」


あたしの言葉にも、一穂は不安そうな表情を消さなかった。


「本当に、それだけでいいのかな?」


「え?」


あたしは首を傾げて一穂を見つめる。