エレベーター

あたしは再び廊下へと視線を戻した。


昇降口まであと5メートルほどの距離。


しかし、その手前にはエレベーターがある。


あたしはゴクリと唾を飲み込んでエレベーターから離れた場所を歩き始めた。


「大丈夫。絶対に大丈夫」


ブツブツと念仏のように口の中で呟いて足を進める。


昇降口は徐々に近づいてきて、外の空気を感じられた。


そのままエレベーターの前を通り過ぎた。


ほらね、今日は大丈夫!


ホッとして笑みを浮かべた、その瞬間だった。


チンッと小さな音がして、間髪入れずにエレベーターのドアが開いていたのだ。


「え……」


驚愕し、目を見開いて開かれた扉を見つめた。


箱の中は昨日と同様に弱いオレンジ色に照らされていて、闇の部分が残っている。


「な……んで……?」


今日はあの機械音は聞こえてこなかったのに。


ボタンだって光らなかったのに。


なのにどうして!?