エレベーター

もう使わないと心に決めていたのに関わらず、こんなに早く古い校舎を歩く事になるなんて……。


『美知佳、ビデオ通話に切り替えて』


その声は幸生だった。


「え?」


『なにかあったときにすぐ駆けつけられるように』


なにかってなに? そう聞きたいのをグッと我慢した。


できれば何事もなく外へ出たい。


でも……エレベーターの中の出来事が思い出されてあたしは強く身震いをした。


幸生の言う通り、すぐにビデオ通話に変えた。


『本当に誰もいないんだな……』


2階へ降りて来ても生徒の姿は見られなかった。


先輩たちも、もう帰ってしまったのか。


それともやっぱり、あたし1人が別世界に飛んでしまったのか……。


そんなことを考えながらあたしは2階の新しい校舎へと足を急がせた。


2階ならシャッターが下ろされていないかもしれないと考えたのだ。


しかし、その淡い期待はすぐにかき消されてしまった。


「2階にもシャッターが下りてる……」